フィギュアを通じてアーティストの未来を創る(グッスマ代表 安藝貴範氏)

フィギュアを通じてアーティストの未来を創る(グッスマ代表 安藝貴範氏)

日本のポップカルチャーを世界中に発信してきたグッドスマイルカンパニー安藝社長にインタビュー。

創設以来、フィギュアを中心に日本のポップカルチャーを世界中に発信してきたグッドスマイルカンパニー。アニメスタジオやゲームチームもあり、中国やアメリカなどにも拠点をもつ「グッスマ」が、どのようにオタクカルチャーのマーケットを拡張させてきたのか。そこにどんな思いや挑戦があったのか。BAITとの協業のきっかけなども伺いなら、同社の安藝社長にインタビューしました。

情熱を持ってクリエイティブに向き合う人をハッピーにしたい

僕自身は、ものづくりしている人が好きなんです。キャラクターホビーに携わるアーティストやクリエーターがものづくりに没頭し、それを仕事として継続できる環境をつくりたい、情熱を持ってクリエイティブに向き合う人がハッピーになってほしい、そう思って事業を運営してきました。


グッドスマイルカンパニー代表の安藝貴範氏

イベント運営会社・タレント事務所として2001年に創業したグッドスマイルカンパニーですが、同年にマックスファクトリーの補佐業務を経て、フィギュアの企画・製造業務を進めることになりました。もちろん、フィギュアをビジネスにするのは初めてです。その後、業界で注目を集める美少女フィギュアもまだ黎明期でした。

当時、誰がみても唸る彫刻のような作品を造るアーティストがいました。でも、どれだけ作品が優れていても、それを受け入れられるマーケットがありませんでした。腕に自信があっても、それで食べていけるのか、不安はつきなかっただろうと思います。フィギュアは、オタクの中のオタク、まさに選ばれしオタクのみが持つものと一般的には認識されていて、マーケットも小さかったのです。

製造・流通の仕組みを変えて、オタクマーケットを拡張

マーケットが大きくならない背景には、お客さんが欲しいフィギュアを手に入れにくい事情があるのではないか、そう考えながら流通や製造方法、お客さんとのコミュニケーションを見直しました。

その頃、問屋や小売店の多くは、メーカーから大量に商品を仕入れて店頭に並べ、そこからお客さんに好きな商品を選んでもらう販売モデルを採用していました。模型には定番が多く、例えば戦艦大和のプラモデルは、3年後あるいは5年後でも売りを見込めます。しかし、当社が扱うキャラクターフィギュアは、まさに「今」放映されている作品に紐づくものがほとんどで、商品の寿命としては比較的短いです。

従来の模型販売モデルにおいて、フィギュアの在庫はリスクそのものです。そのため問屋も小売店もフィギュアの発注にはセンシティブにならざる得ない状況でした。そこで小売店が安心してメーカーに注文できるように、受注生産モデルをフィギュア業界に導入しました。一定数のオーダーを確保できるよう店頭販促にも力を入れましたが、それでも工場のラインの確保は大変で苦労しました。

フィギュアの開発方針も大きく見直しました。当時人気を集めていたソフビの生産工程では、美少女たちの躍動感あふれる髪や、キラキラと輝く瞳を表現できなかったからです。PVCの技術を見直し改良を重ね、美少女フィギュアの品質も大きく変わりました。2004年に発売したDEAD OR ALIVEの「霞」フィギュアは大ブレークし、オタクだけでなく一般の人にもフィギュアが浸透していく大きな契機になりました。


今にも歌って踊りそうな、躍動感あふれる初音ミク 10th Anniversary Ver.のフィギュア

美少女フィギュアとして一躍有名になった霞。その第二弾は、ECサイトで販売しました。予想を遥かに上回るアクセス数で、ASPのサーバが落ちるほどの人気っぷりでした。これを機にECサイトもASPから自社運用のAWSに変更し、「いつでもどこでも」購入できる環境を整備しました。フィギュア業界の製造や流通の仕組みを変えていく中で、継続的なビジネスが生まれ、業界全体が成長しました。フィギュアのイメージもすっかり変わり、オタク以外の人からも十分に愛情を注いでもらえる存在になりました。

フィギュアは「作品を愛する時間を長く」する

例えば、今月始まったアニメ作品を見て、小さなマスコットキャラクターを買ったとします。きっかけは、「これ知ってる?」「あ!知ってる」みたいな、友人とのちょっとしたコミュニケーションへの期待かもしれません。そして、放映が終わった1年後はどうなってるでしょうか。きっとキャラクターへの愛情も深まり、少し高額のフィギュアも「欲しいものリスト」の1つに入っているのではないでしょうか。


Prinz Eugen(プリンツ・オイゲン)のフィギュア

フィギュアの役割は、「キャラクターを愛する時間を長くしてくれる」ところにあると思います。映画やアニメ、いろいろな作品からフィギュアが派生すると、作家さんたちの手によって生み出された作品たちが、より多くの人に、長く愛してもらえるようになります。製造や流通の仕組みを変える挑戦を続ける中で、良い作品には良いフィギュアが生まれるというサイクルが生まれたのは、僕たちにとっても非常に嬉しいことでした。

痛車で参戦したスーパーGT、国際戦ではBAITコラボ

レースの世界に参入したのは、痛車でレースにでたいと知人から相談されたからです。痛車といえばオタク。オタクといえば、その業界に詳しい僕だろうと。最初からスポンサーを探すのは難しいので、「痛車で出場して注目を集めよう」ということで始まりました。ちょうど初音ミクがメディアに少しずつ登場するようになった頃でした。ソーシャルメディアを通じて、レースを盛り上げたいという思いもあり、クリプトンさんに協業をお願いしました。


「痛車」レーシング仕様のMercedes-AMG GT3

頼まれて参加したプロジェクトでしたが、いつからか僕たちが主導する立場になってしまいました。なんとしても勝利が欲しいと強く思うものの、参加当初から資金難が続いていました。そこで、ファンの人たちにも応援してもらう、今で言うクラウドファンディングを導入しました。また、一方では企業スポンサーを通じて関連グッズの製造・販売し、レーシングチームを維持してきました。


BAITxグッドスマイルレーシングコラボのロングTee

デビュー間もないという点では、チームも初音ミクも同じでした。まだ強くないチームを応援することと、ミクを応援する感情が重なっていたのです。初年度は最終戦でやっと完走したのですが、もうそれだけで感動です。涙が止まらないファンも多くいました。ユーザーとコミュニケーションしながら一緒にゴールを目指す、そんな新しい文化が誕生したと感じた人は多いと思います。

いつの間にかファンも数万人になり、レースに参入して4年目の2011年、20戦目にしてSUPER GT 第三戦で予選・決勝ともに初めてグランプリを獲得しました。


海外チームからの人気のグッスマxBAITユニフォーム

国際戦でのユニフォームは、BAITにデザインしてもらいました。BAITのユニフォームは、海外チームからも特に人気で、レース後、ユニフォームの交換を求められている姿をよく目にしました。BAITとのお付き合いも、この頃から増えていきました。

グッドスマイルカンパニー x BAIT

日本のポップカルチャーは雑多で、ありとあらゆるジャンルや趣向があります。誰もがクリエーターになれる環境で、多くの人が絵を書いたり、漫画を書いたり、同人誌を書いたり、コミケに出店したりしています。誰かを褒めたり、誰かに褒められたり、互いにリスペクトし合うコミュニティの中で、日々新しい何かが大量に生まれ、ときにスペシャルな何かが生まれる。僕はそんな文化が好きなんですよね。これからも事業を通じて、その文化を支えたいです。

BAITとの仕事は、誰も予想しなかったアイデアに出くわすことが多いです。ときおりコントロールが難しいときもありますが、やはりそれ含めてのコミュニケーションが楽しいです。ファンに喜んでもらうために、僕自身も、BAITとの仕事を楽しみたいと思っています。

BAIT
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illustration by KEI © Crypton Future Media, INC. www.piapro.net
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