Community of BAIT:#001 赤司竜彦(MEDICOM TOY)

Community of BAIT:#001 赤司竜彦(MEDICOM TOY)

「BAIT」で新連載「Community of BAIT」がスタート。「MEDICOM TOY」の代表取締役社長である赤司竜彦さんにインタビュー。

BAIT」で新連載「Community of BAIT」がスタートします。本企画はスニーカーをはじめ、ファッション、アート、トイ、アニメや映画など、「BAIT」を取り巻くカルチャーに精通した方々へのインタビューを通して、既述のカルチャーへの理解を深め、新たな楽しみを提示するコンテンツとなります。

記念すべき第一回は、「MEDICOM TOY」の代表取締役社長である赤司竜彦さんにご登場いただきます。「MEDICOM TOY」は、世界中の映画やアニメ、特撮、アートなどに関連したコレクタブルなトイを展開する、日本を代表するトイメーカーです。クマ型ブロックタイプフィギュアのBE@RBRICKや精巧なキャラクターフィギュアで広く知られ、「BAIT」とは創業当初からの関係値を築き、数々のコラボレーションアイテムを共に製作してきた我々にとってもかかせないパートナーでもあります。

「Community of BAIT」初のインタビューでは、赤司さんに「BAIT」との出会いや過去の取り組みはもちろんのこと、BE@RBRICK誕生秘話、「BAIT」と同じ「渋谷パルコ」にオープンしたスタジオ「2G」のことなどを伺いました。

ーはじめに「BAIT」との“出会い”を振り返っていただけますか?

赤司竜彦(以下、赤司):最初は「BAIT」の現チーフ・ブランド・オフィサー、エリック・ファンさんと出会ったことがきっかけでした。彼は元々、ディズニーのキャラクターグッズを販売・運営しているディズニー・コンシューマー・プロダクツに在籍していた方で、そのエリックの口から「スピンオフをして、ショップを作る」と伺いました。これは、私たちの業界では大変な挑戦であり、様々な課題をクリアしなければいけません。例えば、メーカーがいつのまにかキャラクターを所有し、それにライセンスを与えるということは珍しくありません。しかし、彼の発想は真逆なので、とても骨の折れるプロジェクトに挑まれる果敢な方で、出会いはとても印象に残っています。
「MEDICOM TOY」と「BAIT」の関係が始まった頃は、「BAIT」の展開が3店舗ほどだったと記憶していますが、オーダー数はその規模からは考えられないほど大きなものでした。とてもリスクの伴う行動であると同時に、私自身も同じような道を歩んできた経緯があるので、その時に是非サポートしたいと思いましたね。ただ、蓋を開けてみれば要らぬ心配で、「BAIT」はこの6年間、好調に事業を拡大し、今では素晴らしいビジネスモデルを作られた業界のパイオニアです。我々はトイですが、「BAIT」はスニーカーから新たなポップカルチャーを体現している、一種のスタジオのような存在と位置付けています。

ーこれまでの「BAIT」との取り組みにおいて、印象深い企画やコラボレーションなどはありますか?

赤司:チョイスするキャラクターが非常にアメリカらしい印象です。フェリックスやゴジラは、とても人気のあるコレクターズアイテムになったのではないでしょうか。ただ、個人的には「BAIT」のアイデンティティを感じるオリジナルのデザインが好きです。ComplexConで先行リリースされたゴールドのBE@RBRICKは、金塊をパッケージのモチーフにし、会場にはこのパッケージが豪快に積み上げてありました。もちろん、他のどのブースよりも眩しかったですね(笑)。企画の際、複雑な形状なので送料が高くなるという話もあったのですが、それでも「BAIT」チームはやりたいと仰いました。自分たちの企画のこだわりを曲げないところは、とても素敵です。
「BAIT」には1本芯が通っているイメージがあり、コンセプトがぶれません。キャラクターの選び方や発売時期などは「BAIT」ならではで、商品のラインアップにも一切の違和感がない。彼らの独自性は、他に類を見ないものなのではないでしょうか。

ー「MEDICOM TOY」は、年間でどれだけのプロダクトを生産されているのでしょうか?

赤司:設立は、1996年です。2021年には25周年を迎えるのですが、あっという間でした。我々は現在、年間で1000〜1200程度のプロダクトを生産していますが、「BAIT」を含め、コラボレーターの方たちとの取り組みは全て記憶していると自負しています。ただ、これだけの量を作るのは、ビジネスのためではありません。漫画家の手塚治虫先生の教えで「面白い仕事はやらなければいけない」という言葉があり、私はこの言葉を座右の銘としています。「忙しいから断ろう」「こちらの仕事の方が美味しい」、様々な考え方がありますが、私は面白いことは全部やると決めています。なぜなら、面白いことには貪欲でありたいからです。ただ、それは裏を返すと、関心のないことはやらない、ということでもあります。だから、自分がやるからには面白くしたいですし、面白い仕事であればどんなに忙しくても受けたいと思って日々取り組んでいます。

ー「MEDICOM TOY」のアイコンであるBE@RBRICKの誕生秘話を教えてください。

赤司:2002年、テディベアが生誕100周年を迎えました。テディベアは、第26代アメリカ合衆国大統領のセオドア・ルーズベルトの趣味である熊狩りのエピソードをもとに誕生したぬいぐるみで、“ペットと家族の中間に位置する存在のオモチャ”としてアメリカで大ブームが起こり、今でも多くの人々に愛されています。私は今から約20年前にテディベアが生誕100周年を迎えるという新聞記事を見て、当時、自分も次世代のテディベアを作りたいと思いました。これがBE@RBRICK誕生のきっかけで、クマのカタチである理由にはこういった背景があるからです。
実はBE@RBRICK誕生の前年に、KUBRICKという商品群を作りまして、ティム・バートンの『猿の惑星』の日本公開時、前売り券にKUBRICKを付けたところ、当時の映画の前売り券の新記録を達成しました。これを機にオファーが殺到したのですが、KUBRICKはパーツの多い商品のため、面白くても納期的な理由で泣く泣くお断りした企画が多数ありまして……。そこでパーツを付けずに商品として成立させられるような企画という発想と、先ほどのテディベアのストーリーが相まって、BE@RBRICKは生まれました。
100%サイズから始まり、400%は最初はソフビでした。400%初期に藤原ヒロシさんも参加されているNike HTMとのコラボレーションがあり(金網模様のボディの頭部に?マークを配置したもの)、それ以降、ニーズが高まり、1000%が誕生し、1000%はKAWSでデビューしたと記憶しています。

ー近頃はアートやフィギュアなど、コレクタブルな文化が隆盛傾向にあります。「MEDICOM TOY」のアイテムも対象になることが多いかと思いますが、赤司さんは現在のトレンドやアートバブルをどのように俯瞰されてますか?

赤司:アートバブルは様々な周期で起きますが、現在のそれを支えている大きな要員のひとつにアジア圏、特に中国のコレクターの存在があるかと思います。現在、中国はアート大国として急成長を遂げています。「The Art Market 2019」の調べによると、2018年の中国の美術市場の規模は、アメリカ、イギリスに次ぐ世界第3位でした。上海では美術館の建設ラッシュがあり、この中にはコレクターや民営のものも多く、彼らは政府から優遇を受けています。また、中国アートシーンの繁栄の大きな理由に土地の高騰もありまして、4、5年前に数百万円で購入したマンションが数千万円になったというエピソードを聞きました。そうして、大金を得た人たちが、手にした資金でアートを収集しているという一面もありますね。日本と海外諸国には、アートの税制や文化予算に大きな開きがあり、これが日本にアート文化が根付かない大きな要因と考えられています。
ただ、私には日本がアジアのアートシーンにおけるフランスのような存在になってほしいという想いがあります。日本は、アート、トイ、カルチャーの全てにおいて特異な存在です。それは決してネガティブな意味ではなく、この先、独自の発信源として機能していってほしいという希望です。私たちにもその一翼を担っていきたいですね。

ー赤司さんは気になるアーティストや企業があれば、自らコラボレーションを持ちかけると伺いました。

赤司:はい。これに関しては、個人的な興味関心や趣味趣向が一番大きいと思っています。アーティストに関しては、その方の作品をより多くの人に見てもらう機会を創出したい。企業とのお取り組みには色々なケースがありますが、面白い可能性を秘めていても、まだ上手く羽化しておらず、「共に面白いことをやりましょう」と提案する場合などもありますね。
コラボレーションを決めるのは、最初の1分です。ファーストインプレッションは、出会って間も無く脳内に記録されます。そして、その印象はその後も大きく変わることはありません。人が最初の15分で与えた印象を変えるには、3年かかるという理論も存在します。だから、目に触れた瞬間に「この人と何かをしたい」と感じた時の気持ちをとても大事にしたいんです。最近であれば、イギリスのファッションデザイナーであるステファン・クックは久しぶりに衝撃を覚えましたね。とにかく、カッコいい。私にとっては、チャールズ・ジェフリー以来でした。

ー「BAIT」は渋谷パルコで日本初進出を果たしました。その渋谷パルコには、「MEDICOM TOY」が携わる「2G」もあり、フロア違いではありますが「BAIT」とはご近所さんでもあります。赤司さんは新生渋谷パルコについて、どのような印象を受けましたか?

赤司:少し前情報があったので、頭の中には私の妄想のパルコ像がありました。ただ、実際に完成して館内を歩き回ると……とてつもない商業施設が完成したと思いましたね。構造的な視点からですが、このタイミングで、渋谷のど真ん中にあれほどのブランドを誘致したビルができるはずがないんです。でも、できてしまった。これはパルコの企業努力の賜物だと思います。企画段階で色々な葛藤や困難があったことは容易に想像できますが、彼らは本当に良い施設を作りたいという一心で、あそこにテナントを集約させたのだと思います。私は、その心意気に惚れました。

ーそんな渋谷パルコにオープンした「2G」についても少しお話しをお聞かせください。

赤司:南塚さんのアート、POGGYさんのファッション、我々のトイ。文化的に共存する要素を意図的にひとまとめにしたショップは、もしかすると世界初かもしれませんね。この3つのカルチャーが融合した背景には、「NANZUKA」というギャラリーがキュレーターとして存在しており、彼らなくしては成立しません。南塚さんも「渋谷パルコでアートギャラリーをやって欲しい」と相談を受けたそうですが、それは直球すぎるとのことで、「2G」はPOGGYさんや「MEDICOM TOY」を巻き込んだストア機能のあるお店をやりたいという彼のアイデアに端を発しています。
企画当初の青写真とは変わりましたが、ほぼイメージ通りのカタチになった気がしています。これからは「NANZUKA」が紹介するアーティストも楽しみにしていてください。一概に現代美術といっても、アーティストの考え方は人それぞれです。そういう中で、彼らはアートのコマーシャリズムに対して寛容なアーティストたちと太いパイプがあり、そのような取り組みを果敢に継続していますからね。

ー最後に「MEDICOM TOY」としての今後の展望をお聞かせください。

赤司:バンカーにもよく「長期的な計画を教えてください」と聞かれます(笑)。でも、私はいつも正直に「わからないです」と答えています。ただ、わからないというのは決して未来に対して展望がないという意味ではなく、出会う才能やプロダクト、コンテンツによって未来は変わるので、その瞬間に一番ベストな選択を継続していくだけだと思っています。それ以上でも以下でもないと。なので、場合によってはリスクも惜しみません。先ほど、私たちは年間で1000〜1200程度の商品を作っているとお伝えしましたが、1つの商品を作るには半年から8ヶ月の開発期間を要します。そうなると、常時600前後の案件が進行していて、この状況が15年も続いています。それでも、面白いことは全部やりたい。このコンセプトに共感してくれるスタッフが世界中から集まっているので、「MEDICOM TOY」のDNAは極論、私が死んだ後も絶えないと思っています。兎に角、面白いことをしたい、それだけです。昔と比較すれば少しだけ投資できる資金も増えてきましたし、もっと面白いことに挑戦していきたいですね。でも、いくら場数を踏んでも勉強の毎日なんですけどね。

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