Community of BAIT:#002 上岡拓也(イラストレーター)

「Community of BAIT」は、ファッション、アート、トイ、アニメや映画など「BAIT」を取り巻くカルチャーに精通した方々へのインタビュー連載です。

「MEDICOM TOY」の代表取締役社長である赤司竜彦さんに続く第2回は、上岡拓也さんのアトリエに訪問しました。上岡さんは、adidas、ドトールコーヒー、アヲハタジャムなどに作品を提供してきたイラストレーター/グラフィックデザイナーで、KOHH、水曜日のカンパネラ、KANDYTOWN、BADHOPをはじめとする著名アーティストのCDジャケットも手掛けています。アーティストは通常、ひとつの作風に絞って制作活動を行いますが、彼は水彩画やエアブラシ、さらには油絵までを巧みに操り、描写力にも優れた稀有な画家です。

今回は絵の道に進んだきっかけはもちろん、制作する際における作品との向き合い方やアーティストとしての新たな方向性などを伺いました。


ー上岡さんは何がきっかけでアーティストの道へ進むことを決意したのでしょうか?

昔から絵が得意なタイプでした。配布されるプリントを裏紙にして、授業中もよく落書きをしていましたね。美術の先生からもよく褒められましたよ。珍しいタイプかもしれませんが、勉強にはあまり関心がなかったので、小学生の頃から芸術の道に進むことを心のどこかで決めていたんです。

ー現在は様々な作品を描かれていますが、当時は何を描いていたのですか?

グラフィティを真似して描いてました、小学生にして(笑)。僕は電車通学だったのですが、車窓から見えるコンクリート壁に描かれたグラフィティを見て、すごく刺激を受けて。通学中ですから毎日のように見ていましたし、タッチや色味を直感的にカッコいいと思ったことを今でも鮮明に覚えています。

ーアーティストは資格がないので、プロとアマチュアの線引きも曖昧なものかと思いますが、ご自身がプロとしての自覚を持ったのはいつですか?

そうですね。生業にしているか否かという判断もできますが、僕にとっては高校生の時に美術の専門学校に入学したことが大きかったと思っています。

最初は木炭のデッサンから始めるのですが、そこにはもちろん技術的指導が入ります。国語や算数と同様、絵にもカリキュラムがあり、先生方は僕が今まで漠然と思い描いていた「知りたかったこと」を教えてくれました。その時に初めて、絵画というカテゴリーの“存在”を自覚しましたね。

入学からまもなくして学内の大きな賞を受賞することもできました。専門学校入学前は紙に落書きをしている「クラスに1人いる、絵が上手い奴」でしたが、専門的な視点から評価されての受賞は重みが違いますし、才能や技術があるという自信を持つこともできました。ちゃんとやれば仕事にできると思うきっかけになったターニングポイントでしたね。

ーKOHHやKANDYTOWN、BADHOPなどのカバーを手掛け、日本のヒップホップシーンからも高く評価されているかと思います。

高校3年の頃、BlackEyePatchのN(デザイナー名は非公表)と出会って、一緒にグラフィック制作をやるようになりました。現在、彼はアパレルを展開していますが、元々はグラフィックチームで、20歳を過ぎてから一緒にスタジオを設け、デザインチームとして活動をしていました。ヒップホップのコミュニティもMIX CDやフライヤーの制作など、当時の活動をきっかけに形成されたもので、Nがグラフィックやコミュニティ作り、僕が絵を担当し、2人で1の作品を制作していました。その文脈でKOHHくんのプロデューサーとも繋がって。「アルバムリリースがあるので、マグリットを彷彿させるものを」とのご希望があり、それが彼の「MONOCHROME」です。

Nとは今でも仲良く、BlackEyePatchにも作品を提供させてもらっています。友人でもあるし、ビジネスパートナーでもあり、良い関係ですね。

ーラッパーのカバーアート以外にも、バヤリースやドトールコーヒー、アヲハタジャム、銀座三越など、ジャンルレスにクライアントワークをされています。タッチや技法のバリエーションも豊富ですが、それらの技術はどのようにして会得されたのですか?

アーティストは、ひとつのスタイルでやっていく人の方が多いので、僕は特殊かもしれませんね。僕は単純に絵が好きで、気になるとやりたくなるし、やり出すと納得するまでやる凝り性なところがあります。水彩画、油絵、エアブラシも一度始めると没頭してしまうんです。最初は絵の仕事で食べていくことが目標だったし、仕事であれば何でもやるという姿勢でした。そのためには、引き出しも多い方がいい。描くことが好きなので、スタイルに優劣はありません。

ー制作するうえで最も大切にしていることを教えてください。

今の話しにも通じますが、納得するまでやること、ですかね。アーティストは◯◯調や◯◯風で作品を制作することがあります。例えば、アメコミ風、とか。僕は「それっぽくしてみたけど専門分野ではないし、この程度でいいかな」と妥協して終わらせてしまうことが許せなくて。もちろん、その道で僕より上手い人はいると思います。ただ、専門のアーティストに見せても恥ずかしくないところまではクオリティをあげたい。そのために、リサーチは惜しみません、何で描いているのか、画材は何か、どれぐらい時間をかけているのかなど、ソースとなるものを徹底的に噛み砕いて、自分のものにするように心がけています。

ー制作におけるインスピレーションは、どのように収集しているのでしょうか?

例えば、旅に出て大自然に触れることで・・・といったようなものは特にありません。ただ、小学生の頃に遊びの一環としてやっていたグラフィティのエッセンスは未だに様々な作品に反映していますね。それは大手企業への作品提供でも、です。色の使い方や曲線を描くスタイルは独特なものがあるので、制作面で助けられている部分は非常に大きいです。他の何かからではなく、例えばグラフィティの要素を油絵になど、絵には絵からインスピレーションを受けているようなイメージです。

ー今、油絵というワードがありましたが、最後の個展では油絵の作品を多数展示・販売されていました。どのようにしてストリートアートの象徴であるグラフィティから、より芸術として歴史の深い油絵にたどり着いたのでしょうか?

絵を追求すると、最終的には油絵だと思っています。おっしゃるとおり、油絵は歴史も深い。16世紀に全盛期を迎え、レオナルド・ダ・ヴィンチの“最後の晩餐”やミケランジェロの“アダムの創造”などルネサンス期の作品は技術も半端ではありません。専門的な観点から「絵を極める」ことを考えると、油絵は避けては通れないジャンルなのではないでしょうか。でも、今はスマートフォンでも作品制作ができる時代ですから、乾くのに1週間もの時間を要する画法は時代性にはあっていませんし、大変で難易度も高いという理由から嫌煙されるジャンルです。でも、自分のものにすれば、味や個性を表現できるんです。

でも、できる人が少ないからこそ、需要もあります。エアブラシもそのひとつです。将来的な話しですが、最終的には1人の画家として、自身の作品制作だけに専念したいと思っています。

ー個展を含め、作品発表の場について、今はどのように考えていますか?

いい機会があれば、ですね。個展は良いギャラリーと出会うまでは、気長に待とうかなと思っています。若い頃は、スペースを借りて絵を展示し、初日に知人を招いてパーティーを開催して・・・という活動もしていましたが、個人的にそうした実験的な試みはやりきった印象です。わかりやすく説明すると、一般的な「ギャラリー」は、貸しスペースです。ですが、アートディーラーが経営するような画廊は、その画廊に顧客がおり、作家や作品を知り尽くしたディーラーが作品を販売してくれます。なので、僕も技術を磨き、経験をさらに重ねて、展示した作品が売れる見込みがあるタイミングで次の個展を開催できたらと思っています。

ー少し話しは転換するのですが、「BAIT」はアートはもちろん、様々なカルチャーに精通しているストアです。上岡さんは「BAIT」について、どのような印象をお持ちでしょうか?

セレクトショップというと、日本でも著名なアカウントが思い浮かびますが、「BAIT」はエンターテイメント性が高いですね。特に、版権の幅の広さには驚きました。MARVELやSTAR WARSといった本国の作品はもちろんのこと、鉄腕アトムやドラえもんといった日本の作品も網羅しており、著名な作品をほぼ全てを展開できる。これはアニメやコミックのカルチャーが発展している日本のファンやコラボレートパートナーにとっても、非常に嬉しいのではないでしょうか。

ーもし共同プロジェクトをするとしたら、何かやりたいことはありますか?

コラボレーション、ということになると思うので、「BAIT」でしかできないことをやりたいですね。今回「Community of BAIT」にカバーアートを提供させていただきました。こちらのロゴは、「BAIT」が度々コラボレーションしていて、僕も好きな作品のひとつである映画「ヴェノム」をサンプリングしています。


上岡拓也
1985年、東京生まれ。2008年に桑沢デザイン研究所卒業。卒業と同時にフリーとして活動を始める。
HP:https://kamioka-takuya.com/

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#001 赤司竜彦(MEDICOM TOY 代表取締役社長)

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